トレーニングの種目をボディビルという目線からどのように組み合わせていくか、という点をフォーカスして解説します。
- ボディビル競技の勝ち負けの基準
- ボディビルで評価されるためのトレーニング
- コンパウンド種目とアイソレーション種目の使い分け・目的の違い
世の中にトレーニング種目についての知識や情報は数多くあふれていますが、ボディビルやフィジーク等コンテスト競技者に向けて、コンテストで勝つためにどのようにトレーニングを行えばよいか?という質問に対する回答はなかなか見つかりません。
ほとんどの情報はある著名なボディビルダーのトレーニングメニューを紹介しているだけで、多くの人はそれを真似するだけでしょう。「勝ってるやつの真似をすれば勝てるんじゃないの?」という意見もあるかもしれません。ですがこれは違います。
トレーニング種目の決め方は本来各個人の課題に合わせて設定していくものであり、他人のましてやトップビルダーやフィジーカーのトレーニングを真似しても効率的ではありません。トップ選手たちにはそこに至るまでのストーリーがあり、その結果今のトレーニングになったのです。結果だけ真似をしても同じにはなりません。あるお金持ちの行動をちょっと真似してみてもお金持ちになれないのと同じです。その人の背景丸ごと真似をしないと同じにはなりません。そしてそれは大体不可能です。
初心者が足掛かりとしてまず真似から入るというのは悪くはありません、しかしいつかは自分自身のトレーニングメニューを作っていく必要があります。あなた自身のストーリーを構築しその結果自分自身のメニューが生まれるのです。
ここでは、コンテストに向けたトレーニングの考え方そして自分自身がコンテストで勝つためのメニューの組み方を解説していきます。
筋肥大に関する基礎的な知識が知りたい方は以下の記事で紹介しています。
トレーニング種目の基本
トレーニング種目は世の中に多く存在しています。その数はグリップの握りや細かいやり方も含めれば無限大ともいえるほどあります。このような数多く存在するトレーニング種目を分類する方法はいくつかありますが、ここでは以下の二つ、アイソレーション種目とコンパウンド種目に分類し、それぞれの特徴を解説していきます。
アイソレーション種目とコンパウンド種目
・アイソレーション種目
アイソレーショ種目とは日本語で短関節種目と訳します。日本語の通り一つの関節を使うトレーニングです。つまりアームカールのように肘関節のみを起点にして曲げ伸ばしを行い、上腕二頭筋に刺激を入れるようなトレーニングを指します。短関節種目とはやや本質的な表現ではなく、本質的な部分は原文の英語の通り、Isoration=狙った部分のみを分離して刺激を与えるトレーニングです。つまり個別の筋肉を狙ったトレーニングという意味です。アイソレーション種目では比較的大きな重量を扱うことが出来ません。
・コンパウンド種目
コンパウンド種目とは日本語で複合関節種目と訳します。特徴は名前の通り多くの関節を使うトレーニングです。スクワットのように腰、股関節、膝、足首の筋肉を曲げ伸ばしし、大腿四頭筋や、大殿筋、脊柱起立筋等多くの筋肉に刺激を入れることが出来ます。またアイソレーション同様に本質としては英語のcompound=複数の筋肉を組み合わせて刺激を与えるトレーニングです。つまり多くの筋肉を狙ったトレーニングという意味です。コンパウンド種目では比較的大きな重量を扱うことが出来ます。
細かいトレーニング種目の話をする前にまずは大枠でこの二つのトレーニングが存在しそれぞれを目的に応じて使い分けるというのがコンテスト戦略上のトレーニング種目選定に重要な要素になってきます。
コンテストで勝つトレーニング種目の考え方
コンテストで勝つためにどのようなトレーニングをしていけばよいか?という視点に立った時まずコンテストに勝つというのはどういう状態であるかを理解する必要があります。ボディビルのようなコンテスト競技(フィジークでも基本は同じ)では審査基準がありこれはある程度明確なため、そこに評価されるように身体を作り上げていく必要があります。
そのために必要なトレーニングを考えて、選定していくことで闇雲にトレーニングを行うよりもずっと効率的に勝ちに近づくことが出来るでしょう。
コンテストで勝つとは
ボディビルのコンテストで必要な要素は「絞り」「筋量」「バランス」「ポージング」です。ボディビル競技は基本的には“規定7ポーズを取りその中で最もきれいにバランスの取れた筋肉を見せた人が勝ち”というシンプルな競技ですが、このきれいにバランスの取れた筋肉を見せるということをより具体的な言葉にしていきます。(フリーポーズもありますがここでは割愛)
「絞り」
まず”きれいに見せる”というのは、体脂肪を落とし切り筋肉と筋肉の間のカットをはっきりと見せ、各筋群のストリエーション(いわゆる筋)を見せるというのが筋肉を”きれいに見せる”ということです。要するに「絞り」と呼ばれる除脂肪をしっかりと行い、筋肉が脂肪によって隠されていない状態を作り出すというのがこの状態です。
身体の大きさにかかわらず絞りが甘いと身体全体がボヤっとした感じになりボディビルとしては評価が低くなります。反対にパリっと仕上げれば小さくても大きな選手に勝てる可能性もあります。
「筋量」
次に”筋肉を”という点について、これはシンプルに筋肉量を見せるということです。つまり身体全体の筋肉の量を増大させいわゆるバルクを見せるということです。これはトレーニングにより、身体全体を大きくしていくことを指します。一般的なボディビルダーのイメージはこれでしょう。所謂アウトラインをでかくするというイメージです。筋量のある選手はアウトラインが大きくパッとみてデカイという存在になれます。
「バランス」
ここからは少し踏み込んだ話になります。”バランスの取れた筋肉を見せる”という点において、バランスとは上半身がでかいが足が細いとか、胸はあるけど背中が弱いとかそういった弱点を見せないというのもバランスの一種ですが、私が本当に言いたいバランスとは関節との比や各筋群の比率、その人の骨格的を生かして実物よりも見た目上でかく見えるという。メリハリのある身体ということを意味しています。これは各人の骨格や筋肉の付き方によるものも大きく影響する部分でもあります。
「じゃあ具体的にバランスの取れた身体って何?」と思われた方もいるでしょう。これについて一般的な回答としては、歴代のチャンピオン、そしてその中でも現在のチャンピオンがこのバランスの指標といえます。つまり現時点では相澤隼人選手の身体がバランスの取れた筋肉のデータムポイントということが出来ます。ただ、体形などにより目指す部分は個人個人で変わってくるでしょう。
バランスという字面では全体的なというイメージになりますが、言葉とは裏腹にバランスのいい体は筋肉感のメリハリ間が出てサイズ以上に”筋肉がある感”が出ている身体です。言葉で表現することが難しいのですが、実際には大きくないのに大きく見えるのです。チャンピオンが大きくないと言っているわけではありません。彼らはめちゃデカイですが、バランスが取れていることで更にステージ上で何割も増してでかく見えます。このメリハリ間を生むのがバランスなのです。
「ポージング」
最後に”規定7ポーズの中できれいにバランスの取れた筋肉を見せる”ということについて、いくら筋肉量があって絞れていてもポージングがきれいに決まらないことにより、バランスも見せられませんし、実際にはカットを出すことも出来ません。つまり全てを満たすことが出来なくなってしまいます。
従いポージングはボディビルの基本であり、ステージングにおける技術のセンターピンです。「ボディビルダー≠筋肉がでかくて絞れている人」であり、「ボディビルダー=でかくて絞れた身体をポージングによってきれいに見せる技術がある人」ということになります。
さて、ここまでコンテストにける重要な4要素を解説してきました。これらの要素とトレーニングを結び付けていこうと思います。結論から言うとトレーニングと大きく関係がある要素が「筋量」と「バランス」です。
「絞り」はトレーニングもちょっと関係ありますが、メインは食事です。これについては除脂肪編で詳しく述べていきますのでこの記事では割愛します。「ポージング」に関しては基本的に技術ですのでポージングの練習を行う必要があります。これについてもポージング編で解説します。また技術練習としてトレーニング中の意識が重要という意見もあると思いますが、ここでは種目選定にフォーカスするため割愛します。
ではこの「筋量」と「バランス」を成り立たせるためにどのようなトレーニングを行っていくべきなのでしょうか?これらの要素を先ほど説明した”コンパウンド種目”と”アイソレーション種目”に紐づけて解説していきます。
コンパウンド種目の目的
コンパウンド種目の特徴は先ほど説明した通り多くの筋群を刺激することが出来ます。そのため一つのトレーニングで関連筋群を全て鍛える=筋肥大させることが出来ます。また大きな重量を扱うことにより筋力の増大つまり神経系の発達によりトレーニングのボリュームを増大させていくことも大事なポイントです。
これらを踏まえてコンパウンド種目のボディビル競技における基本的な目的は筋量を増やし、アウトラインを大きくしていくことです。もちろん個別のトレーニングや手法によりこれに限りませんが、基本はコンパウンド種目=デカくなるための種目と考えてください。
いわゆるBIG3と呼ばれるスクワット・デッドリフト・ベンチプレスもコンパウンド種目す。これらが重要と言われるのは、これらの種目をやりこむことで全体的に筋力が上がり、アウトラインが大きくなりやすい種目のため重要と呼ばれているのです。(実際に重要かどうかは各人の目的にもよりますが)
アイソレーション種目の目的
アイソレーション種目の特徴はある筋群を個別に刺激することが出来るため、その筋群に特化して筋肥大することが可能です。またコンパウンド種目の場合弱い筋力がボトルネックになり、目的の筋肉に刺激が十分入らないこともあり得ますが、アイソレーション種目ではきっちり狙った筋群に刺激を入れることが出来ます。
つまりアイソレーション種目のボディビル競技における基本的な目的は、狙った筋群を筋肥大させメリハリをつけることでバランスの良いプロポーションを作ることです。つまりアイソレーション種目=体のバランスを変えプロポーションを整える種目と考えてください。
より二頭筋を目立たせるためにアームカールをやりこむとか、あしの四頭筋をでかくして前から見たボリューム感を演出するといった個別の戦略を達成するためのトレーニングと言えるでしょう。
コンテスト戦略におけるトレーニング種目
トレーニング種目の基本についてはあなたも理解できたと思います。これを踏まえたうえで私の考えるコンテストにおけるトレーニングの基本戦略は以下の通りです。
コンパウンド種目を中心に身体のアウトラインを大きくし、各個人の課題に合わせてアイソレーション種目でバランスを整えていく。
つまり、ボディビルダーとして、コンパウンド種目で筋量を高め、バルクあるアウトラインという土台を作り、その上にアイソレーション種目でメリハリのあるバランス取れた筋肉を積み上げていくというイメージです。大事なことなのでもう一度繰り返します。ベース(基礎)をコンパウンド種目で作り、上物(装飾)をアイソレーションで調整していくということです。
これを行うためには、まず個人の課題設定ということが大事になってきます。
コンテストのためのトレーニングメニューの組み方
ここでは具体的に、メニューを組むための課題設定やメニューを組む際に考える必要があることを解説していきます。この内容さえ押さえれば、あなたも自分の理想の身体を作る自分オリジナルのトレーニングメニューを組むことが出来るようになるでしょう。
現状を知る
まずこれが一番大事です。自分の今の体形を把握することと、自分の理想とする体形を設定することで、この二つの状態のギャップを解消するというのが課題になってきます。ここのステップはトレーニング初心者・中級者と上級者では大きく変わってきます。
まず初心者・中級者の場合ですが、とにかく全体的なアウトラインが足りていません。ボディビルコンテストに出場するためにまずは最低限のボリュームアップを考えましょう。理想とする体形は自分の身体からは想像できないと思いますので何となくボディビルダーを調べてみて自分の好きな選手の身体を理想として取り組んでみてください。
注意点として参考とするボディビルダーはナチュラルの選手を選んでください。世には公言しないものの多くのステロイドユーザーが存在しています。具体的に言うとJBBFの大会に出ている選手は基本的にナチュラルですのでJBBFのトップ選手や身近にJBBFの選手がいればその人を目指してください。
上級者について、ここでいう上級者というのは既にコンテスト出場経験があるような方を指します。上級者の場合は自分の課題がアウトラインなのか、弱点があるのか、はたまた絞りが甘いのか、ポージングが悪いのか等自分の現状を知る必要があります。もし知り合いに審査員の方がいればその方に自分の現状を教えてもらえると一番良いでしょう。難しければジムのトレーナーと相談しながら自分の現状を把握していくと良いです。
課題を設定する
初心者・中級者の場合は上述の通り、課題はボリューム不足です。従いアウトラインを大きくするというのが最大の課題になってきます。一方でやはり自分で好きなように出来るのがトレーニングの良い所でもありますので、何か一つ好きな部位を大きくするといった独自の課題をアウトライン以外に設定しておくとモチベーションの面でもよいでしょう。
例えば上腕二頭筋の力こぶを大きくするという課題を追加で設定した場合に、全体のトレーニングが行き詰っている、重量が伸びない、といったときにふと鏡や過去の写真と比べて自分の力こぶが以前より大きくなっていれば、「おっなんだかんだ成長してるな!」と思いやる気が出てきます。
上級者の場合自分の現状に合わせてトレーニングで改善していくことが出来そうなものをトレーニングで解決していきます。具体的には弱点や伸ばすべき部位をアイソレーション種目で追加で行うことにより強くしていくことです。ただし、トレーニングの総量は限界がありますから、強い部位のトレーニングを減らすなどしてメニュー全体のバランスを整えていく必要があります。
ボディビルのトレーニングの長期的な流れは、アウトラインをでかくし、コンテストで課題を発見しそれに向けた種目の追加・削除を繰り返していくことになります。これによりトレーニングのマンネリ感もなくなり、毎年新しい課題克服の為にメニューを刷新していく楽しみも出来ます。
メニューを設定する
以上を踏まえたうえでトレーニングメニューを設定します。ベースは何度も言っていますが、コンパウンド種目中心で組んでいきます。
私は全身法に近い分割法を推奨していますので、具体的に全身法を行う際のメニューの組み方を説明します。
その場合全身抜けがないようにコンパウンド種目を選択してください具体的には胸・背中・脚・肩に少なくとも一つはコンパウンド種目を入れてメニューを組みます。具体的にはプレス系・懸垂/ラットプル系、スクワット系、ショルダープレス系を一つずつは各筋群のトレーニングに組み込んでください。そのうえで各人の課題に合わせてアイソレーション種目を入れていくと良い感じになるでしょう。腕のトレーニングは無くてもコンパウンドで使われるので安心してください。ただそこが課題というのであればこれに腕のアイソレーションを追加すると良いでしょう。
ブロスピリットのような分割法を行う場合でも、脚の日にレッグカールやレッグエクステンションのようなアイソレーションをベースに組み立てるのではなく、まずはスクワット系、レッグプレス系のコンパウンド系を軸にしてそこから足りない部分を追加する、つまりカールやエクステンション、ブルガリアンスクワット等を追加していくという考えが良いでしょう。
間違っても胸の日にペックフライト、ダンベルフライそしてケーブルクロスオーバーのような種目ばかりに力を入れるといったメニューを組まないようにしてください。アイソレーション種目ばかりで構成すると、バランスの悪い筋肉になり、見た目も悪くなりますが、何より筋肉の不均衡はケガのもとになります。
また、どうしてもアイソレーション種目では、コンパウンド種目で必要とされる体幹をガッチリ安定させるための腹圧や呼吸、力の入れ方等の技術が疎かになりがちなため、筋力が伸びず頭打ちになる傾向にあります。
コンパウンド種目中心のトレーニングではこのような見た目の不均衡とケガ防止、筋力の増大等多くの効果がありますので、分割法の方でもコンパウンド種目中心で組むようにしてください。
コンパウンド種目の基本
さてここまででコンパウンド種目主体でトレーニングメニューを組み立てると言いましたが、具体的にどんな種目があるのかを説明します。一通りざっと流しで説明するので細かい部分や注意点については別の記事を参照してください。ここでの目的はまずどんなものがあるかどうかを知ってもらうことです。
アイソレーション種目はとても数が多く紹介しきれないのでここではコンパウンド種目を紹介します。別記事でアイソレーション種目はについて解説したいと思います。
種目の名前の付け方
トレーニング種目ってめちゃくちゃ数がありますよね、名前も似たようなものばっかりで良く分からないという人も多いと思います。そういった方にまず種目には名前を付ける一定のルールがあることを覚えておいてください。これさえ覚えておけばある程度名前を聞けばどんな動きをするか分かります。
結論から言うと、トレーニング種目の名前の付け方は基本は「体制or部位+動作」です。体制というのは身体の状態を表します。例えばベントオーバーロウイングというのはベントオーバー=体を曲げてかがめた状態:体制+ロウイング=バーを引く:動作です。他にはアームカールは、アーム=腕:部位+カール=曲げる:動作です。一般的にコンパウンド種目は体制+動作が多く、アイソレーション種目は部位+動作が多いイメージです。
これに加えて、器具名が付いてくる場合もあります。例えばケーブルマシンを使えばケーブル~となったり、ダンベルとバーベルを使い分けてそれぞれダンベル~、バーベル~となる場合です。
基本的にはこれらのルールで種目の名前は決まります。
ここで言いたい大事なことは、動作や部位が同じ種目の場合同じ筋肉を刺激するトレーニング種目である場合が多いということです。つまり何が言いたいかというと背中のトレーニングだと言って、ベントオーバーロウイングやケーブルロウイング、T-barロウイングを行ったとして、それらは同じ背中特に僧帽筋中部を狙ったトレーニングであるため、何個もやる必要がないということです。
どうせやるならロウイング系に加えて背中の幅である広背筋を鍛えるプルダウン系を行いバランスよく背中を鍛えるべきです。要は名前の付け方を知ることで、鍛える部位が偏らないようなメニューを組む際の判断材料になるということです。従い基本的な部分は抑えておくと役に立つでしょう。
最後におまけで名前から動きが想像しにくい系の特殊な名称パターンを紹介します。それは「考案者or地名+動作系」です。これらは○○さんがやっていた種目、□□発祥の種目といった意味であり動作の体制や詳細を説明しておらず、名前だけではわかりません。
具体例を出すとアーノルドプレスやフレンチプレスといった種目です。どちらもプレスであるため押す動作であることは分かりますが、どのように押すかは名前ではわかりません。このような種目は誰かに教えてもらうか、youtubeで動画を探すと良いでしょう。
基本コンパウンド種目一覧
ここではコンパウンド種目の基本的なトレーニング種目を紹介します。基本的なというのは、上述の通りいくつか派生パターンは存在するものについても、本質的には同じトレーニングであるものについては一つのトレーニングとして紹介します。
具体例を挙げるとベントオーバーロウイング、ケーブルロウイング、T-barロウイングなどは全てロウイング系として一つのトレーニングとして扱います。基本種目の主な狙いの筋群と、各トレーニング種目の特徴を解説します。
胸
ベンチプレス系
ベンチプレス系はベンチの上に寝転がり、バーを胸の上で肘を伸ばして構え、そこからバーが胸につくまで上下するトレーニングです。主として大胸筋を鍛えられ、補助的に上腕三頭筋や三角筋前部も動員されます。器具のバリエーションとしてはダンベル、バーベル、スミスマシン、マシンプレスなどがあり、大胸筋の上部や下部の鍛え分けとして、ベンチ角度を変えたインクライン・ディクラインベンチプレスが存在します。
みんなに大人気でライトなトレーニング層では「ベンチ何kg挙げれる?」というのは挨拶みたいなもので、100kgを上げると一人前という称号を得られます。
脚
スクワット系
スクワット系はバーを肩に担ぎ膝を伸ばした状態から曲げていき、お尻がかかとにつくかつかないかのところからバーを膝を伸ばしてバーを挙上するトレーニングです。主として大腿四頭筋が鍛えられ、補助的に内転筋や大殿筋、脊柱起立筋が鍛えられます。バーを担ぐ高さが首の根元の場合はハイバー、肩甲骨で担ぐ場合はロウバーと呼び、一般的にロウバーの方が背筋や大殿筋を使えることで重量を扱えます。器具のバリエーションとしてダンベル、バーベル、スミスマシン、ハックスクワットなどがあります。
最もきついトレーニングであり、心肺機能、全身筋力、精神力全てが必要でありトレーニングの王様とも呼ばれています。また最も辛いトレーニングであることからスクワットを避けるトレーニーも多く、大好きな人と大嫌いなひとに分かれます。
一方で腰の負担も大きい種目であるため、体の固さや骨格により合う合わないがあり、デッドリフトと合わせてケガのリスクも最大である種目です。正しいフォームを身に付けて、そのうえで自分に合うかを見極めて採用すると良いでしょう。
レッグプレス系
レッグプレスは座った体制で足を前に向けて伸ばし、膝を曲げ伸ばしするトレーニングです。主として大腿四頭筋が鍛えられ、補助的に内転筋や大殿筋が鍛えられます。基本的にはマシンで行う種目で45度の角度が付いたものとケーブルがつながったスタック型のウェイトの2パターンがあります。派生形としてベンチに寝転がりスミスマシンを使って行うことも可能です。
スクワットとの違いは腰の負担が少ないという点です。またひざの可動域がやや狭いという違いもあります。
背中
懸垂・ラットプルダウン系
懸垂・ラットプルは肩幅よりやや広くバーを握り、下から上に自分の身体を引き上げるのが懸垂で、上から下にケーブルにつながったウェイトを引き上げるのがラットプルダンです。主として広背筋・大円筋が鍛えられ、補助的に僧帽筋・上腕二頭筋も鍛えられます。懸垂はオーソドックスなトレーニングであるものの、正しいフォームでは負荷が高く意外と難易度の高い種目でもあります。ラットプルダウンは軽い重量から始められ負荷の調整も容易なため初心者でもやりやすい種目です。器具のバリエーションとして、懸垂のようなバー、ケーブル、マシンがあります。
ローイング系
ローイング系は、懸垂などが上から下へ引く動きであったものに対して、前から後ろに引く動作です。ロウイングの語源でもあるボートのオールを漕ぐ動作がロウイング系種目です。こちらも背中ですが主として僧帽筋中部・脊柱起立筋を鍛えられ、補助的に三角筋後部・上腕二頭筋が鍛えられます。器具のバリエーションとしてケーブル、ダンベル、バーベル、マシン、T-bar等様々な種類があります。マシンも特徴の分かれたものが多いです。
注意点としてアップライトロウという種目がありますが、これは下から上に肩幅に持ったバーを引き上げる動作です。ロウと名前が付きますが、鍛える筋肉は三角筋です。補助的に上腕二頭筋も鍛えられます。
イメージとして懸垂ラットプルダウン系が背中の幅、ローイング系が背中の厚み方向を増やします。
デッドリフト
デッドリフトは床に置いたバーベルを肩幅ほどの手幅で持ち、大根を地面から引っこ抜くように下から上にバーを引き上げ直立状態までもっていきます。主として脊柱起立筋や広背筋が鍛えられ、補助的に足全般や腕にも刺激が入り全身が鍛えられます。一般的に最も大きい重量を扱うことが出来る種目であり、重力に逆らっている感覚が最も強い種目です。
ただし高重量を扱うことからケガのリスクもそれなりにあり、スクワット同様腰のケガの原因になります。多くの筋肉を一度に動員するBIG3の一つですが、逆に言えばデッドリフトでなくては鍛えられない筋肉というものはないのであえて選択しないというのもありです。
ただ、私見ですが筋肉がでかく、パワーのある人はデッドリフトが強い傾向にあると思います。因果関係は分かりませんが神経系の発達という意味でデッドをやりこむとでかくなるかもしれません。一度は挑戦してみるとよいでしょう。
などと言いながら私はメニューにデッドリフトを入れていません。これは全身法を行う場合、脊柱や腰の負担が大きく、加えてとんでもない疲労感があるため、デッドリフトを入れるとトレーニングボリュームを稼げなくなるという理由からため泣く泣く削りました。
肩
ショルダープレス系
ショルダープレス系は立ちまたは座った状態で肩幅にバーを持ち、胸の上・首のあたりから頭の上まで持ち上げる動作です。主として三角筋中部が鍛えられ、上腕三頭筋が補助的に鍛えられます。器具のバリエーションとしてはダンベル、バーベル、スミスマシン、マシンなどがあります。
マシントレーニングとフリーウェイト
マシンとフリーウェイトどちらが良いのかというのはたびたび論争になります。結論から言うとどちらでもよいです。ただマシンとフリーウェイトで特徴がありますので実際に触ってみて自分に合う方を選択してください。
マシントレーニング
マシントレーニングは特定の種目をするためだけに作られたトレーニングマシンです。レッグエクステンションやレッグカールなどフリーウェイトでは再現が難しいものもあります。マシントレーニングは軌道が拘束されているため、狙いの筋肉以外のバランスを保つ筋肉を動員する必要がありません。従い、特定の筋肉のみを鍛える場合に有効です。
また軌道の工夫などにより可動域全体やストレッチポジションで刺激が抜けないようになっていたり、フリーウェイトでは不可能な刺激も可能です。また、バランスを保持する必要がないということはバランスを崩す危険性もないため基本的にはケガのリスクもフリーウェイトより少ないと言われています。
一方で、マシンはメーカーにより各社特徴があり、同じトレーニングマシンであっても同じ動きではない場合が多いです。従い、ずっと同じジムで同じマシンを使うのであれば問題ありませんが、慣れたマシンでしかトレーニングが出来ないと、出張や他のジムのビジター利用の際に思うようなトレーニングが出来なくなってしまうデメリットもあります。
フリーウェイト
フリーウェイトのトレーニングはバーベルやダンベルを使いベンチなどで体制を変えながら行うトレーニングです。特徴として、どこでやってもバーベル、ダンベルさえあれば再現可能であり同じトレーニングが可能です。また軌道がフリーであるため自分の思い通りに動かすことができ、マシントレーニングより自由度は高くなります。
またフリーウェイトのトレーニングをやりこむことで、どこへ行ってもフリーウェイトさえあれば再現可能なため技術として持っておくと世界中どこでもジムさえあれば出来るため、サラリーマン的には助かります。
一方でバランスの保持が難しく、フォームによってケガのリスクが高まります。また、重量の方向は上から下のみのため、鍛え方にある程度制約が出てきてしまいます。
おすすめは、初心者はマシンから触ってみて、慣れてきたらフリーウェイトをトレーナーに教えてもらいながら覚えます。一通りやりこんだら自分に合うほうを軸にトレーニングメニューを組み立てて行く。という順序で行けばフリーもマシンも使えるけどいつもはやりたい方でやるという状態を作れます。この状態さえ作れればどこでも対応できるでしょう。
私の使い分けとしては、普段はフリーウェイト+スミスマシン中心でメニューを組んでいます。どうしてもフリーウェイトで出来ないレッグエクステンションやハックスクワットのような種目はマシン種目とし、ビジター利用や出張先のジムではいろんなマシンを触ってトレーニングをするというような使い分けをしています。軸をフリーウェイトに置くとどこでも重要なトレーニングは出来ますし、一方で外では新しいマシンを触る楽しさを味わえるという楽しみ方です。
まとめ
ここまでコンテストに勝つためにどのようなトレーニングメニューを組むべきかを解説してきました。この記事のまとめは以下の通りです。
- トレーニングは大別してアイソレーション種目とコンパウンド種目に分かれる
- コンテストで勝つためにはアウトラインを大きくし、メリハリを出すトレーニングの必要がある
- コンパウンド種目はアウトラインを大きくし、アイソレーション種目はメリハリを出す
- 基本戦略はコンパウンド中心で身体を大きくし、課題に合わせてアイソレーションを選ぶ
皆さんのコンテスト戦略において価値のある情報であったら幸いです。最後まで見ていただきありがとうございました。
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