10回×3setが筋肥大にいいとか、高強度が筋肥大に一番効果があるとか、低強度でよく効かせるとか、色んな意見があって分からんというあなたにボディビルダーのための強度設定を紹介します。
- 筋肥大と筋力増強の違い
- 筋肥大のためのトレーニング強度設定
- サラリーマンのための実運用tips
筋力と筋肥大
筋力と筋肥大は混同されがちな概念ですが同じではありません。筋力とは文字通り力の強さつまり筋肉が収縮した際にどれだけの力が出るかということです。一方で筋肥大は筋肉の繊維そのものが太くなり大きくなることです。
結局筋肉が大きくなれば筋肉の収縮力が強くなるのだから同じでしょと思われたかもしれませんが、実はそうではありません。筋力と筋サイズには一定のレベルを超えると相関性がないことが分かっています。つまり最初は筋力が大きくなることに相関性はありますが、ある程度力ついてくると筋肉の大きくても力が強いとは限らないとなります。
この違いはの理由は、筋力の要素は筋肉の大きさだけでなく神経の適応という要素もあるためです。つまり、筋肉自体が大きくならなくても、高重量を持ち上げていくことで神経も鍛えられ筋力が上がっていくのです。
トレーニング初心者が最初の2週間くらいで大きく筋力を伸ばすものの、筋肉自体1~2か月たたないと大きくなってこないという経験はあなたも経験済みだと思います。これが神経適応と筋肥大、ひいては筋力と筋肥大のギャップです。
ということは筋力を高めるためには神経のトレーニングが必要で、筋肥大のためには筋肉が大きくなるトレーニングをが必要ということになります。目的の違うこの二つののトレーニングが同じではないと思いませんか?
もちろんどちらも手段としては“筋力トレーニング”つまりウェイトトレーニングを行うという点は同じですが、その内容が変わってきます。その違いがトレーニング強度です。
筋力トレーニングという名前が紛らわしいですね。
具体的には何が違うのでしょうか?結論を言うと筋力を伸ばすためには高強度のトレーニングが必要になり、筋肥大のためにはトレーニング強度は関係ないというのが結論です。
筋肥大のためには強度が関係ない?どういうこと?という疑問に以下の項で答えてきます。
筋肥大の公式
筋力の増強には神経の適応が必要なため、実際に強度の高い負荷を行い神経をその負荷に慣れさせます。そうすると神経が適応しもっと重い重量が上がるようになっていきます。これはとてもシンプルであなたの体感でもそうでしょう。
一方で筋肥大のために必要なものは、筋肉に対する総負荷量(重量×回数)=トレーニングボリュームです。
以前はサイズの原理という理論から中高強度のトレーニングしか筋肥大に効果がないとされてきました。この理論は”強い力を出すときに速筋・遅筋含む全ての筋繊維が動員され、弱い力の時は動員される筋繊維が少なく遅筋しか動員されない。そして速筋の方が大きく筋肥大には速筋を鍛える必要があるため強い力を出さないと筋肉は大きくならない。“という理論でした。
しかし近年の研究では弱い力を出すときでも、筋肉が疲労してくれば徐々に大きな筋肉も動員され始め、疲労困憊の状態では結局全ての筋肉が動員されるということが分かってきました。この研究を基に低負荷でも疲労困憊までトレーににぐを行った場合、筋肉が肥大するかどうかを確認する研究が行われ、結果としては高負荷でも低負荷でも筋肥大効果は同じという結論を出しています。
では低負荷と高負荷で筋肥大が同じになる条件は何でしょうか?
それが総負荷量=トレーニングボリュームが同じという条件だったというわけです。これをトレーニングボリューム理論と呼びます。
よって筋肥大の為にはとにかくこのトレーニングボリュームをとにかく高めていく必要があるのです。
用語説明
トレーニングボリュームを高めるトレーニングについて考えていく前に、まずは基本的な用語のおさらいをしましょう。言葉の定義が曖昧だと人によって様々な解釈が生まれる可能性もありますし、そもそもよくわからんとなりますからね。
こんなんしっとるわ!という人は読み飛ばしてください。
RM, RPE
RM, RPEともによくトレーニング界隈ではよく聞く言葉ですね。まずRMについてですが、こちらは強度の話をするときによく出てくる言葉です。
RM:Repetition Maximumで直訳は最大繰り返し回数のことです。トレーニング用語としての意味は最大回数繰り返しできる重量を指します。スクワット10RM 100kgであれば最大で100kgの重量でスクワットを10回出来るという意味です。
トレーニングにおいては自分がどれくらいの重量を何回挙げられるかというのは大きな意味を持つ数字なため、トレーニーにとっては日常会話レベルの言葉です。おはよう!お疲れ様!くらいの頻度で○○の1RMは152.5kgというような言葉が飛び交っています。
ちなみによく1setの中身を10repとか言いますが、このRのrepetitionと同じ意味で繰り返し回数です。
次にRPEですがこちらは追い込みの話をするときに出てくる言葉です。
RPE : Rating of perceived exertionで直訳は感覚的な力の出し切り程度で、日本語では自覚的運動強度と言います。言葉は難しいですが要はどれだけ追い込んだかという意味です。
RPE10が限界まで追い込んだ状態で、RPE0は全く負荷の無い状態です。ウェイトトレーニングでよく使われる表現としては10RMの強度であと1回出来そうなレベルがRPE9、あと2回出来そうなレベルがRPE8というような使われ方をします。
低強度、中強度、高強度
この表現は使われる論文によってもブレがあり、これといった一義的な定義はありませんが、このブログではで以下のような使い分けを行います。
低強度:1RMの30%~50%の強度で50RM~30RMが目安の強度です。筋肥大のためにはトレーニングボリュームが重要と言われていますが、この50RMよりも小さい強度の場合筋肥大効果がないといわれています。マラソンランナーの足がボディビルダーより細いのはこのためです。
イメージとして低強度のトレーニングというのは、低回数では効いているのか効いていないのかようわからんレベルの強度です。
中強度:1RMの70%~80%の強度で12~8RMが目安の強度です。いわゆる一般的な筋トレと呼ばれるレベルの負荷です。初心者がまず最初に教わるの10rep x 3setだと思いますが、これは中強度にあたります。
イメージとしてはあなたが普段しているトレーニングの重量というイメージです。筋トレと言えばこれという重量です。
高強度 : 1RMの90~100%の強度で5~1RMが目安の強度です。筋肥大というよりも筋力増強というレベルの負荷です。重量を伸ばしたいトレーニーやパワーリフターのメインセットのイメージです。
イメージとしては潰れるか潰れないかそんなギリギリのラインでおりゃー!といってあげる重量です。最も重力に逆らっていることを実感できる重量ですね。
筋肥大をさせるトレーニング強度とは?
筋肥大を目的にトレーニングメニューを組んでいく場合の一般的な結論として、中重量を中心に低重量と高重量も少しずつ組み込んでいく。具体的には低重量:中重量:高重量=1:8:1の割合でメニューを組むです。
ではなぜこのような割合にする必要があるのでしょうか?その理由について各負荷でのトレーニングの特徴に紐づけて解説します。
まず低重量についてですが、低重量の最大の特徴はトレーニングボリュームを稼ぎやすいです。ベンチプレスが1RM 100kgの人は恐らく50kgなら20回くらいは出来ると思います。この二つのトレーニングボリュームの差は100 x 1回 = 100kg と50kg x 20回 = 1,000kgと10倍のボリューム差になってしまいます。
このように低重量ではボリュームが稼ぎやすいものの、筋力を高めることが出来ないというデメリットがあります。筋力の向上には神経系の適応が重要でありこの神経系の成長には1RMの70%以上の負荷が必要と言われています。従い低重量のトレーニングばかりしていてもずっと同じ重量でしかトレーニング出来ません。
同じ重量でトレーニングをしていると一時的にはトレーニングボリュームを稼ぐことが出来ますが、長期的にみてトレーニングボリュームを稼ぐことが出来ません。
ベンチ1RM 50kgの人と、1RM 150kgの人では同じ体感の負荷で3倍トレーニングボリュームの差がでます。つまり同じボリュームを稼ごうと思うと3倍時間と体力がいるということになりますが、時間的にも体力的にも現実的ではないでしょう。
次に高重量ですが、低重量と反対の特徴になります。筋力を高めることは出来ますがトレーニングボリュームを稼ぐことが出来ません。先ほどの例の続きでもしベンチプレスで低重量と同様の1,000kgのボリュームをこなそうとすると、高重量の場合1rep x 10 setになります。
これはトレーニングをやる人なら理解できると思いますが、とても出来るれべるでの負荷ではありません。めちゃくちゃ休憩時間をかければ出来ないこともないかもしれませんがほぼ不可能でしょう。
ここまで書けばなぜ中重量が筋肥大野ために重要なのか、そして何故中心にして組むべきなのかはあなたももうお分かりだと思います。
中重量は高重量より時間・精神力をかけずにトレーニングボリュームを稼ぐことが可能であり、低重量と違い筋力を伸ばしていくことで長期的にトレーニングボリュームを稼ぐことが出来るという二つの負荷のいいとこどりをするためです。
そして付加的に強度を高めるための高重量と、トレーニングボリュームを稼ぐことが出来る低重量を入れることで、、結果的には短期的にも一回のトレーニングセッション時間が短くなり、長期的にもトレーニングボリュームを伸ばしていくことが可能になります。これが時間効率を考えた筋肥大の手法になります。
トレーニーのレベルでの調整
以上が一般的に筋肥大の為に効率的な強度の設定ですが、これはトレーニングレベルによって戦略が少し変わってきます。
例えばあなたが初心者であれば筋トレのたびにどんどん筋力が伸びていくことでしょう。そういった場合には高強度のトレーニング割合を増やして更に筋力を伸ばし、長期的な筋ボリューム増加を測るというのは理にかなった戦略です。
怪我にだけは気を付けたいところですが、初心者の扱える重量は大したこともないので、ケガをしないフォームをきちんと身につけさえすれば関節への負担もそれほどないでしょう。
一方で熟練トレーニーになってくると、筋力はもうあまり伸びないかもしれません。そのような場合には筋ボリュームを稼ぐために高重量を減らし、中重量・低重量中心でやってみるという戦略もあると思います。
特に中年を超えた熟練トレーニーは若い頃よりも回復力が落ちていたり、関節のダメージを蓄積しがちなため、あまり高重量にこだわらずトレーニングボリュームを稼ぐ戦略も一考の余地があると思います。
上述の通り私の考えのベースは中重量中心をお勧めですが、このように各負荷の特徴をよく理解し、あなたの現状を押さえたうえで強度を戦略的に調整してみてください。
体調による調整
こちらはもう少し日々のトレーニングの話ですが、負荷によって筋肥大効果は変わらないので重量にこだわらず無理せず少しでも軽い負荷で続けることが大事です。このために低負荷のトレーニングも活用すると良いでしょう。
あなたも日々体調の波がありトレーニングに行こうか迷うような時もあると思います。そんな日にあまり高重量にこだわりすぎると行くのが億劫になってしまうことがたまにあります。今日は一日仕事でフル回転して、これからスクワットメインセット150kgはきついな…などと一度は考えたことがあるでしょう。
このような場合に低重量でも筋肥大効果あるということを知っておくことで大分気が楽になります。今日はメイン90kgに抑えて余裕をもってやるかとなると思います。
もちろん自分を甘やかせと言っているわけではなく、高重量がきついからトレーニングを休むよりかは、軽くてもトレーニングをやった方が良いということを言いたいのです。
疲労がたまってきた場合も同じで完全に休むのではなく、低重量のトレーニングを1週間ほどして休む、いわゆるディローディングなどをすることで筋肥大効果は維持しつつ関節や神経を休めるということが可能です。
低重量にはこのような使い方もあるので、日々のトレーニングの関節休めとして使うのもよいです。ちなみにですが低重量は関節には優しいですが、体感的にはきついトレーニングですのであまり頻繁に行うと精神的につらいのでバランスよく行ってください。
サラリーマンの実運用
さてここでは仕事とボディビルを両立させたいあなたの為にもう少し、踏み込んで話をしたいと思います。あなたの現状はいわゆる中年で、仕事や家庭など時間が限られているという状況ですよね?
そのため無限に体力や時間がある学生や、ほとんど専業のビルダーたちとは違った戦略を取っていく必要があります。
時間効率を上げる
トレーニングの負荷を変えて時間効率を上げるためにはどうしたらよいでしょうか?答えは簡単で低重量のトレーニングを活用してボリュームを増やすということです。
上述の通り、低重量には1setのトレーニングボリュームを稼ぎやすく、時間がかからないというメリットがあり、加えて低重量にはアップや機器のセットに時間がかからないという大きな時間メリットもあります。
特に時間が取れない平日などは重量を下げて相対的にトレーニングボリュームを稼ぎ筋肥大効果を高めることが出来るでしょう。
一方で上述の通り筋力の増強は高負荷をやる必要があります。そのため時間の取れる週末を筋力を高める時間として充てると良いでしょう。
つまり休日筋力を高め、平日は中重量が出来るときにして、時間がないときでも低重量でとレーニングボリュームを稼いでいくという戦略になります。こうなると恐らく低重量:中重量:高重量=1:1:1くらいになるかもしれませんが一週間のトレーニングボリュームさえ最大化していれば何の問題もありません。
サラリーマンの課題はトレーニングボリュームを稼ぎにくいという点ですので、そこを低重量も使って補っていきましょう。
ケガを防ぐ
学生や専業トレーニーももちろんケガをしてはいけないと思いますが、社会人として仕事を持っている人も当然身体が資本ですので趣味でケガをしている場合ではありません。
身体を使わない仕事であったとしても腰が痛ければ長時間座れないし、何か痛みがあれば仕事のパフォーマンスは落ちてしまいますのでケガは極力避けたいところです。
また、年齢を重ねたことで回復力が落ちてきて関節や全身疲労がたまりやすくなってしまっていることでしょう。こういった観点でもケガを防止するというの重要な項目です。
さてトレーニングの負荷でケガを防ぐにはどうすればよいか?という話になりますが、こちらも同様に高重量にこだわりすぎないということです。
また、トレーニングを行う際にパーシャルレンジではなくフルレンジで行うことで相対的に扱える重量が小さくなり結果関節への負荷が小さくなります。フルレンジで扱えない重量というのはあなたにとって重すぎる重量ですので、フルレンジで扱える重量にしましょう。
若い頃は自己顕示欲がそれなりにあり、重い重量を持っていることに優越感もあったと思いますが、もうそういったことはやめましょう。本当に大事なことは筋肉をでかくすることとケガをしないことです。
このように日々のトレーニングで重量にこだわりすぎず、フレキシブルに低重量を加えていくことで、ケガを防ぎ時間効率を上げていきましょう。
まとめ
ボディビルのためのトレーニング強度設定はいかがだったでしょうか?筋肥大と筋力増強の違いについて、あまり理解しないまま筋トレをしている人も多い印象です。この二つの違いを理解し、低重量・中重量・高重量を適切に使い分けることで、ケガをせず高い時間効率で筋肥大効果を高めていきましょう。
いまのトレーニングの重量設定に悩んでいる方、長年トレーニングを続けてきたものの重量も筋肥大も停滞してい悩んでいる方にとって、この記事があなたのトレーニングのブレイクスルーのきっかけになることが出来れば私もうれしいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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