筋肉をでかくしたいあなた。今までの筋トレ知識を最新のものにアップデートしたいあなた。ここでは最新の筋トレ知識を基に筋トレの基礎を解説していきます。
- これからトレーニングを始めるサラリーマン向けの筋肥大のために必要な基本的な知識
- 現在主流の筋肥大に必要なトレーニングの要素
- 筋肉を大きくするためにどれだけトレーニングをするべきか
- 限られた時間の中でどうやって効率的に成果を出すか
筋トレを始めてみると、筋トレには多くの要素があることが分かります。扱う重量、回数、セット数、頻度、フォーム、etc.実に様々です。これらの要素を「筋肥大」という観点から、これらをどのように設定すべきなのか。この記事を読めばその基本理論が理解できます。
また、この記事では時間の限られたサラリーマンに対して、最大限に効率を高める具体的な手法を紹介します。時間がないとボディビルダーみたいな筋肉は諦めていたあなた、現在仕事との両立でトレーニングメニューに悩んでいるあなた、この記事を読んで一緒にボディビルダーを目指しましょう。
サラリーマンでなくてもこれからトレーニングを始める人も、今までトレーニングを継続してきたけど結果が出ていない人、トレーニング知識を最新のものにアップデートしたい人といった方にとっても、この記事の内容は有用な情報になると思います。
トレーニング大原則は「継続」
まず、本当の基本中の基本ですがトレーニングは「継続」が命です。どれだけハードなトレーニングを出来る人がいても1回のトレーニングでは筋肥大はほぼ起きません。それよりも緩くてもトレーニングを継続した人が筋肥大を起こします。
日々仕事に精を出しているサラリーマンのあなたは、ただでさえ仕事に精神力を使っているのにトレーニングまで頑張りすぎてしまえば心身共に疲弊し、やがて続けられなくなります。
千里の道も一歩から、ボディビルの道も1repからということで、まずはトレーニングを継続していくためのポイントについて紹介していきます。
100点を目指しすぎない
トレーニングとは継続すべき習慣です。この習慣をあまりにも厳しく律しすぎると窮屈で面倒になります。例えばトレーニング前のプレワークアウトを持っていくのを忘れた、トレーニング後のプロテインを忘れたといった場合に効果が落ちるから・・・といっていかないのではなく、とりあえず行ってやるということが重要です。
やらないよりも少しでもやった方が確実に効果があります。トレーニング自体も同じです。今日は気分がのらないからと言ってやらないよりも取り合えず行って1setでもやった方が良いです。
また、トレーニングの強度が上がらないとか思ったように効果が出ないといったときに計画通りに行っていないと考えてモチベーションが下がり行かなくなっては本当に効果が出なくなってしまいます。そんなときは「まぁそんなもんか」とい考えを持つとともに、いくつかの指標を持っておくと良いでしょう。
例えば強度が上がらない場合の考え方として、重量が上がっていないけど見た目が良くなっている。体重は増えている。トレーニング自体はうまくなって効いた感覚が上がっている。等いくつかの指標を持っておくとそれぞれの項目についてモチベーションが持続するきっかけになるでしょう。
給料は上がっていないが仕事のスキルは上がっている、社内の評価は高まっていると感じることで仕事を頑張れるのと同じです。給料だけを見ると何年も変わってないと腐りがちですが、実際には成長しているはずです、いずれ昇進とともに給料も急に上がります。
筋肉もこれと同じで突然ブレイクスルーします。それまでの間に成長感を感じることが重要です。
とにかく、思い通りにいかなくても継続させることが大事です。筋肉は一日してならず。ただ100日経てば気が付いたら増えているものです。抽象的なイメージですが、80点を目標とし、60点を継続できるレベルであれば自分をほめるというレベルでよいでしょう。
ハードルを出来るだけ下げる
継続に必要なものは、ハードルを下げるということです。まずは一歩を踏み出しそれから徐々に定着して…というのが物事を継続させるやり方ですが、最初の一歩というのが最も難しく実際は一歩目さえ踏み出してしまえば二歩目三歩目というのは自然と踏み出せるものです。
これは筋トレを始める始めないという大きな話だけでなく、日々のジムへ行くということでも同じです。ジムに行きさえすれば自然とトレーニングを始められます。この「行ける」か「行けない」かというのが継続できるかできないかの分水嶺になるのです。
そのためジムにいかにして行けるかということを考えることが、トレーニングに対するハードルを下げるということを意味します。
私個人的には以下のような対策でハードルを下げることが出来ると考えています。
- 家から近いジムを選択する
- 持ち運ぶ荷物を最小限にする
- 軽くてコンパクトな靴・ギアを選択する
- トレーニング後のご褒美を設定する
家から近いジムを選ぶ
家から近いジムを選ぶというのが最も効率的に継続率を高める方法です。家から近いというのは心理的、物理的なハードルがかなり下がります。雨の日に徒歩5分と徒歩30分ではトレーニングに行くための心理的ハードルがかなり違うでしょう。「ぱっと行くか」と「傘もって30分かぁ、帰りも濡れるかもしれないな」では全然違うでしょう。
また仕事後に行く場合において、「今日は残業があって遅くなったけどジムに行きたい」となった場合に30分かかるジムの往復を考えると寝る時間が遅くなり明日に影響が出るからいけないといった、物理的な距離の制約が出てきます。
このように近いジムを選択するというのは継続に直結する要素ですのでまず近いジムを選択するということを優先してください。ジムの選び方については以下の記事でも紹介しています。
荷物を最小限にする
トレーニングに必要な荷物を最小限にすることも継続に関係します。仕事前/後にジムに行く場合は荷物を会社に持っていく必要があります。しかし、その荷物が多いとか重いとかそういう状況になると準備が面倒になったり、荷物の持ち運び自体が面倒になったりしていくのが億劫になる可能性があります。
こういった場合に、まずは荷物を減らすことが出来ればよいのですが出来ない場合には、ジムの個人ロッカーを活用しましょう。例えばトレーニングベルトや靴等常時必要で置いておけるものなどは、もうずっとジムの個人ロッカーに入れておきいちいち持ち運ばないことです。
軽くてコンパクトな靴・ギアを選択する
とはいっても個人ロッカーがない、もしくはお金を払いたくないという方もいるでしょう。そういった場合には持ち運びに便利な靴・ギアを選択してください。
一般的なトレーニングシューズであればかなりカバンの中の容量を圧迫しますが、最近はコンパクトなトレーニング用シューズがあります。具体的には靴はSAGUARO:ベアフットシューズやワークマンの建さん作業靴Ⅱなどの靴は非常にコンパクトで持ち運びにかさ張りません。
また、トレーニングベルトもカバンの容量・重量を増やす大きな要因です。特に革製のベルトや最近ボディビル界隈でも使う人が増えてきたSBDのレバーアクションベルトは非常に容量を食います。
ベルトの軽量化・省スペース化を行うのであれば、ナイロン製のトレーニングベルトをお勧めします。特におすすめなのはSCHIEKのベルトです。ナイロンベルトはやや締め付けが弱い部分もありますが、SCHIEKのベルトはナイロン製の中では締め付けが比較的強くお勧めです。
ナイロンのベルトは革製と違い折りたたんでカバンに放り込むことでカバン内のスペースを圧迫しません。また重量的にも軽いので持ち運びには非常に便利です。
このように持ち運ぶものを軽く小さくすることで、仕事前後のトレーニングの場合でもカバンがかさばらず荷物を持つ面倒さを減らすことが可能です。満員電車の中でパンパンのカバンを持って移動するのは心身の疲労がたまるのでロッカーの利用やこのような持ち運びに便利なグッズで工夫すると良いでしょう。
ちなみに私も外のジムを訪れるときはSCHIEKのベルトでベアフットシューズを使っています。
トレーニング後のご褒美を設定する
トレーニングを継続させるための工夫として、何かワクワクすることをトレーニングに結び付けるというのも継続させるために有効です。ご褒美というとトレーニング後に好きなものを一つだけ食べるといった普段我慢しているものを解放するというイメージを思い浮かべがちですが、トレーニングに行く際にワクワク出来れば何でも構いません。
これは好きな人とのデート等楽しい予定が週末に入っていると、どこ行こうかな、何をしようかな、何が楽しいかな、と実際の楽しい時間をイメージしてその週はワクワクした気分で過ごせるといったものと同じ原理です。人間は楽しいことが起こる未来を想像しながら生きるだけで、現在が楽しくなる生き物なのです。
従い、ご褒美といっても、例えばジムに可愛い受付の女の子がいたとして、その子に会いたいのでジムに行くというものでも構いません。ジムに行くことにワクワク出来れば自然とジムに足が向かいます。そしてジムについてさえしまえばトレーニングをするしかありません。このワクワク感は人によって様々だと思いますが、ジムに行く・若しくはトレーニング後にワクワクすることを想像しながらジムに行くというのが継続に役立つでしょう。
このようにトレーニングを継続していくと、最終的にはトレーニング自体がワクワクすることになっていきます。ボディビルダーは皆苦しみながらトレーニングをしていません。トレーニングがしたくてしたくてたまらないのです。そうやってトレーニング自体がワクワクするものになれば、行くかどうかという悩みはなくなり、今日は行ってどんな目的を持ってやろうかな?といった、行くことは前提での悩みに変わるでしょう。
トレーニングボリューム
次にトレーニングについて継続の次に重要な要素を解説します。では実際にトレーニングを行うにあたり重要なことは何なんでしょうか?それは”トレーニングボリューム”です。
トレーニングボリュームの解説の前に、まずトレーニングの目的について少しだけ深堀りします。“ウェイトトレーニング”の目的は「筋力の強化」・「筋量増大」という二つの目的があります。前者はパワーです。つまりどれだけ力が出せるかです。後者は筋肉の量つまり筋肉の太さです。昔は筋肉が太いほど筋力が強いというのが定説でしたが、現在ではその二つはある程度の相関はあるものの別物というのが定説です。
具体的には筋力は神経系の発達で成長するものであり、筋量は筋肉組織そのものが肥大するものです。従いこれらの二つを成長させるためには少し異なったアプローチが必要になります。
この記事はボディビルコンテスト出場に向けてのトレーニングの基礎であるため、トレーニングボリュームは筋肥大を目的としたトレーニングを行うにあたり重要な要素という意味と理解してください。
トレーニングボリューム理論とは
筋肥大の理論は一昔前まで”サイズの原理”という原理で説明されてきました。これは発揮する筋力によって動員される筋繊維の量が変わり、大きい力であれば多くの筋繊維が動員され小さな力であれば少しの筋繊維しか動員されないという理論です。そして少しの筋繊維しか動員されない場合は出力の小さい遅筋繊維しか動員されないということも言われていました。
また、遅筋繊維はマラソン選手の体形のように太くなりにくい筋肉であるため、筋肥大のためには速筋繊維を刺激し、速筋を鍛えることが必要だということも言われていました。
この原理により、大きい力を発揮させ速筋繊維を動員させ、刺激することにより、速筋繊維が成長し筋肥大が起こる。というのがサイズの原理による筋肥大原理です。つまり筋肥大を起こすには高負荷・高重量のトレーニングを行う必要があるというのサイズの原理に基づく筋肥大理論です。
具体例を挙げると、ワンハンドアームカール20kgを1回しかあげれない人がいたとします。この時20kgが100%の出力だとすると、10kgのダンベルをあげるときは50%の出力です。このような負荷が小さい場合は比較的出力の小さい遅筋繊維が多く動員され、速筋繊維が動員されないため筋肥大効果は小さいとい。一方で16kgのダンベルでは80%の出力であるためより多くの速筋繊維が動員され、筋肥大効果が大きくなるという理論です。
一昔はこのように言われていました。しかし現代の科学はこの理論を支持していません。現在はトレーニングボリューム理論という理論が筋肥大の原理を説明しています。
トレーニングボリューム理論は「1setを疲労困憊まで行う場合、筋肥大の効果は筋肉に与えた機械的な刺激の量によって決まる。」具体的に言えば重量 x 回数によって筋肥大効果が決まるという理論です。つまりアームカール10kg x 8rep =80kgと16kg x 5rep =80kgでは筋肥大効果は同じということです。ただ最大筋力の30%以下の出力では筋肥大効果が少ない可能性が示唆されていますので、最大筋力の30%~100%の範囲でという注釈が付きます。
また、筋肉のパンプ感のような化学的刺激や筋肉痛などの要素も筋肥大とは関係がないことが分かっており、この機械的刺激の量をいかに稼ぐかというのが筋肥大を最大効率化するポイントになってきます。
この理論のポイントは二つ、”疲労困憊まで行う”と”機械的な刺激”です。これらについてもう少し踏み込んでいきます。
疲労困憊とは?何故必要?
疲労困憊までというのがこのトレーニングボリューム理論の”肝”になってきます。サイズの原理では大きな筋力を発揮しないと多くの筋繊維が動員されないというのが筋肥大において高重量を扱う根拠でした。
一方でトレーニングボリューム理論では、たとえ小さな筋力の発揮であっても、回数を重ねるごとに筋肉は疲労し、徐々に多くの筋繊維を動員しないとその筋力が発揮できなくなることで最終的にはすべての筋繊維を動員し、またそれでも疲労が重なれば上がらなくなる。と説明されています。これにより疲労困憊まで行えば重量にかかわらずすべての筋繊維が動員され筋肥大するという理論です。これがトレーニングボリューム理論の肝です。
ではここでいう疲労困憊とはどういった状態なのでしょうか?とても定性的な言葉ですが、実はこれにもすでに定量的な答えが出ており、一度も上がらなくなる限界回数 – 2~3回 =疲労困憊です。つまりもう上がらない限界ちょっと手前くらいまで行えば30%~100%の負荷でも筋肥大効果が期待できるということです。
ただ注意点としてこの限界回数 – 2~3回というのは理論的な値であり、実際に人間の感覚で後2~3回出来るなというのはもっと手前の感覚であるということが分かっています。つまり実際にはあと4~5回出来るのに人の頭ではあと2~3回出来るなという感覚になってしまうのです。ここで終わらせてしまうとせっかくのトレーニングの効果を下げてしまいます。
よって実際にトレーニング行う際はあと1回出来るか出来ないかという感覚のところまで行うことで、この疲労困憊という条件を満たしていくと良いでしょう。
機械的刺激とは?
上述のトレーニングボリューム理論では機械的刺激=重量 x 回数と表現しましたが、これは厳密ではありません。機械的刺激とは英語で表現するとmechanical stressです。メカニカルストレスって何?重量 x 回数と何が違うの?と思われるかもしれません。ここの言葉の中身についてここでは解説し、その意味から重量回数以外にも重要な要素があることを読み解きその要素についてここでは解説していきます。
まずmechanical stressというのは機械工学系の技術者であればピンとくる単語です(実は私のサラリーマンとしての本業は機械系の技術者です)。機械的というのは言葉の意味で車とか飛行機とかそういうものを想像しがちですが、筋肉へのmecanical stressとは筋繊維に対して作用した力という意味で理解できます。ウェイトトレーニングのボリュームという意味で考えると、作用した力の総量(=ボリューム)つまり力 x 距離 = 仕事と捉えることが出来るのではないでしょうか?
この筋肉がした仕事=トレーニングボリュームであるとすれば回数と重量だけでは定義することは出来ません。仕事に必要な要素として一度の動作におけるウェイトの移動距離が必要になるのです。
また、もう少し筋肉の機械的特性について踏み込んでみると、筋肉の物理モデルは粘弾性モデルでモデル化されます。「いきなりなんだ難しいな」と思われたかもしれませんが、要は筋肉にはバネのように伸びると緊張する=力がかかるという特性があります。つまり、筋肉が伸びた状態と縮んだ状態で同じ全力を出したとしても、伸びているときの方がより大きな力が作用しているということです。つまり伸びた状態で負荷をかけることが力を大きくし、仕事 = トレーニングボリュームを増やすということが分かります。
それでは、これらの要素を具体的なトレーニング要素に落とし込んで考えていきます。
可動域
可動域とはトレーニングを行う際にウェイトをどこからどこまで動かすか?ということです。ダンベルカールで考えてみるとわかりやすいですが、腕の関節の可動域はまっすぐ伸ばした0°から肘を曲げ切った150°くらいが可動域ですので、ダンベルカールの最大の可動域は0°~150°程度となります。
さて先ほど力 x 距離 = 仕事の総量が多い方がトレーニングボリュームが多という話をしましたが、どのような可動域のトレーニングがトレーニングボリュームを稼げるのでしょうか?そうです可動域が広い方がトレーニングボリュームが多い=筋肥大に効果があるということです。
ここで少し疑問がある人がいると思います。一つは可動域を大きくとると扱える重量が小さくなって非効率ではないか?もう一つは可動域を大きくとるとケガのリスクが高いのではないか?という点です。
前者については扱える重量が小さくなっても構いません。それ以上に可動域を大きくとるメリットがあります。特に後述するストレッチポジションまでしっかり使い切ることは重量が軽くなるデメリットよりもメリットの方が大きいです。重量が軽くなってでも広い可動域でトレーニングを行った方が筋量が増えるという研究データがあります。
また後者について、結論から言うとケガのリスクは増えません、上述のように可動域を広くとると扱える重量が小さくなることで結果的には関節への負荷が小さくなります。スクワットを対象にしてパーシャルで200kgを行うトレーニングよりも100kgのフルスクワットを行った方が関節への負担も少なくケガのリスクが低く筋肥大効果も高いという研究結果もあります。
つまり広い可動域を取ることでトレーニング効果を増大し、ケガのリスクを低減します。ただし痛みを伴うような関節本来の動きを超えた可動域というのはケガの元ですので、適切な範囲内で広い可動域を取るようにしてください。これは身体の固さなど個人差にもよるため実際に試して痛みを伴わない範囲で行ってください。
ストレッチポジション
次に筋肉のバネのような特性についてです。バネのように伸びたときに大きな力が作用するというのであれば、トレーニングボリュームを増やすためには伸びた部分で筋肉を使えばよいということになります。このトレーニングの対象筋が伸びた位置というのをストレッチポジションと言います。アームカールでいえば腕を伸ばした状態が上腕二頭筋が一番伸びた位置ですのでストレッチポジションです。
ではこのストレッチポジションで負荷をかけるというのはどういうことでしょうか?可動域を広くとって伸ばせばよいのでしょうか?これは半分正解ですがそれだけではありません。
ウェイトトレーニング、特にフリーウェイトを用いたトレーニングにおいて筋肉に作用する力は一定ではありません。アームカールの例で考えていくと、ウェイトには常に下向き鉛直の力が作用しています。一方でウェイトは肘関節を始点に腕の先にある手で保持されているため肘関節周りの円軌道になります。この時肘関節周りに作用するモーメントは肘関節とウェイトの距離 x ウェイト重量になります。つまり腕を90°に曲げた状態が最もモーメントが大きくなります。一方で完全に腕を伸ばし切った状態では関節とウェイトが一直線になりモーメントは0に近くなります。
このようにトレーニングの1回の動作中に筋肉に作用する力は変わってきます。これをストレッチポジションで負荷をかけるということに応用すると、動作の角度に変化をつけるということがあげられます。つまりストレッチポジションで負荷が乗るような角度で動作をすればよいということです。
またまたアームカールの例ですが、通常のアームカールでは上述のようにストレッチポジションで負荷がかかりませんが、プリーチャーカールにすることでストレッチポジションでも負荷をかけることが出来ます。このように角度を変えたり、ケーブルマシンを利用したりすることでストレッチポジションで負荷が乗るように工夫してトレーニングボリュームを増やしましょう。
フォーム
ここまで可動域とストレッチポジションの話をしてきましたが、これらを支える根幹として正しいフォームが重要です。ここでいう正しいフォームとは機械的刺激を狙った筋肉に与えることが出来るフォームという意味です。簡単にフォームと言いますが、フォームはかなり奥が深い話なので基本的な話だけにします。
機械的な刺激を“狙った筋肉”に与えることが出来ると書いた通り、そもそも狙った筋肉が何で、その筋肉がどのような動きで負荷が作用するのかということを理解していなければ正しいフォームかどうなのかというのはわかりません。ネット上ではyoutube等にフォームの解説動画など無数に挙がっています。もちろんそれらのフォームを参考に始めるというのはとても良いことだと思いますが、それを真似するだけでは正しいフォームは身につかないでしょう。
狙った筋肉に負荷を乗せるというのは、そもそも狙った筋肉が何なのか、その筋肉がどんな動きをする筋肉か分からなければ、出来ないと思います。狙った筋肉に負荷を乗せるためには筋肉の動きを理解し、イメージ出来る必要があります。
一方で知識として筋肉の動きを理解していたとしても負荷を乗せられるかというのは別の話です。実際に負荷を乗せるには感覚的な経験が必要になってきます。また、人によって体形も多種多様ですので誰かの感覚が必ずしもあなた同じ感覚かも分かりません。負荷の感覚というのは自分自身での経験というものが必須となってきます。
色々書きましたが、つまりここで何が言いたいかというと、正しいフォームを学ぶための手順として、まずはお手本をもとに実際にやってみて、やりながら筋肉自体の知識を深めていき、感覚と知識をリンクさせることで正しいフォームを身に着けていってほしいということです。筋肉への知識を深めることも、実際に練習することも怠ってはいけないということです。仮にパーソナルでフォームを見て貰っても本人がイメージ出来なければ身に付きません。
まとめ
以上の話をまとめるトレーニングボリューム理論における筋肥大要素は以下の5要素にです。またこれらを成り立たせるための前提条件として1setを疲労困憊(あと1回上がるか上がらないか)まで行う必要があります。
- ウェイトの重量(=負荷)
- 回数
- 可動域
- ストレッチポジションでの刺激
- フォーム
これらを意識しながらトレーニングを行うことでより筋肥大効果の高いトレーニングを行うことが出来るようになることでしょう。
セット数の目安
あなたもここまでで筋肥大効果の高いトレーニングというものを理解できたと思います。ではこのようなトレーニングをどの程度行う必要があるのでしょうか?ここでは1週間の間にどれだけのset数をこなす必要があるのか、という点を解説していきます。
結論から言うと以下のset数が1週間当たりに行うべき各筋群当たりのset数の目安になります。
- 筋トレ未経験者は各筋群を10set/1週
- 筋トレ経験1年未満の中級者なら10~20set/1週間
- 筋トレ歴2年を超えそれなりの筋量がついてきた上級者であれば30set/1週間以上
以上のようにトレーニング初心者から上級者に向けて筋肥大のためにはトレーニング量を増やしていくことが重要になってきます。体感的にも始めたころは3setでも筋肉痛が起き、一週間に10setも出来るかどうかという感覚だっと思います。一方でトレーニング経験を積んで数年たつと1日に5set程度では筋肉痛も起きず、まだまだいけるという感覚でしょうし実際できます。
このようにトレーニングの量というのは筋トレ経験によって変わってくるものですし、そもそも人によっての個人差も大きいものですのであくまで上記のset数は目安としてもらい、自分自身の感覚で多すぎるのであれば減らし、少なければ増やすのもよいでしょう。
set数の目安としてオーバートレーニングのサインは、夜眠れない、日々疲れが残りやる気が起きないといった精神面のサインが出始める。トレーニングの強度が落ちる、挙上回数が減る。また関節や靭帯など筋肉以外の部分に痛みが出る、もしくはケガをするというような状態です。これらのサインが出始めたらset数を減らしていくと良いでしょう。
一般的に筋肉自体はオーバートレーニングという状態が確かに存在するものの、そこまでたどり着くことは出来ないだろうと言われています。一方でその人のもつ体力自身や関節・靭帯などの関連組織は過度なトレーニングでオーバートレーニング状態になり得ます。筋肉痛も筋肉の損傷ではなく筋肉付近の関連組織の損傷ということが近年明らかになってきています。
筋群とは?
ここで各“筋群”当たりのset数という話をしましたが、そもそも筋群とは何でしょうか?筋群とは“機能が似た筋肉の集まりであり、起始停止が共通、支配神経が同じ場合がある筋肉の集まり”です。
こういわれても良く分からないでしょう。ということでもう少しかみ砕いていうと、関節がある動きをする際に一緒に動員される筋肉の集まりです。具体例を挙げると上腕二頭筋というのは腕を曲げるときに動員される上腕二頭筋長頭と短頭の二つの筋肉で構成される筋群です。つまりよくトレーニングで対象筋として挙げられる名前が筋群というイメージです。
医学的に確かな定義ではありませんが、ここでいう筋群というのは上述の通り一つの関節動作で動員される筋肉の集まりを筋群と呼びます。
トレーニングでよく対象筋となる筋群は以下の通りです。
- 胸:大胸筋
- 肩:三角筋
- 背中(幅):広背筋
- 背中(厚み):僧帽筋
- 腕(曲げ):上腕二頭筋
- 腕(伸ばし):上腕三頭筋
- 腕(手首):前腕筋群
- 腹筋
- 脚(伸ばし):大腿四頭筋
- 脚(曲げ):ハムストリング
- 脚(ふくらはぎ):下腿三頭筋
これらの各筋群を上述のset数こなしていく必要があります。これだけ見ると「こんな数の筋肉を毎週30set以上なんて時間的に不可能だ」と思わるかもしれませんが安心してください。そもそもこれらすべてを狙う必要はありませんし、ベンチプレスなどのコンパウンド種目(複合関節種目)では二つ以上の筋群を動員するためこの1setは二つの筋群に対する1setとなります。つまりベンチプレス1setは上腕三頭筋1set+大胸筋1setとカウントすることが出来ます。
実際に背中や胸、三角筋のトレーニングなどは腕のトレーニングも大体ついてくるため思ったよりも少ないset数となるでしょう。
セット間休憩
ここまでset数について解説してきましたが、ここではset間の休憩時間 = レスト時間について解説していきます。結論から言うとレスト時間はアイソレーション種目で2~3分、コンパウンド種目で3分程度というのが目安です。
その”こころ”は次のセットまでに筋疲労を持ち越さない(次のセットが十分に力を発揮できる)時間かつ、息の乱れを治すことが出来る時間です。つまり長めに休んでも構いませんが、それはそれで時間の無駄なので大体神経疲労が回復する2~3分というのが目安になります。コンパウンド種目の場合、特にスクワットは激しく息が切れると思いますのでそこ級の乱れが回復するというのが一つの目安になるでしょう。
実は一昔前はレスト時間が1分以下の方が成長ホルモンが分泌され筋肥大効果が高いといった理論がありましたが、現代では成長ホルモンの分泌量≠筋肥大効果というのが分かっています。むしろ現在の科学では極端に短いレスト時間は筋肥大に悪影響を及ぼすというのが結論です。
筋肥大効果は上述の通りトレーニングボリューム理論です。つまりレスト時間もトレーニングボリュームを最大にできる時間が筋肥大効果の高いレスト時間ということになります。つまりレスト時間が短く疲労を持ち越すような時間では次のsetの回数が低下しトレーニングボリュームが低下することで筋肥大効果も低減されるということになります。
つまり十分に休息しつつ時間を無駄にしないレスト時間というのが最適解になります。この辺りは上述の目安時間を基に自分の身体で実験を行い最適な時間を感覚的につかむと良いでしょう。
トレーニング頻度
トレーニングの頻度とは同じ筋群(=部位)を週に何回行うべきかという課題です。トレーニングボリューム理論だけでは週に1回でも7回でもトータルで同じset数であれば筋肥大効果は同じということになるのですが、実際にはそうなりません。
近年の筋肥大に関する研究では、各筋群週1回のトレーニングより各筋群週2~3回トレーニングを行った方が同じトレーニングボリュームであっても優位に筋肥大効果があるというものです。4回以上に分けても効果は変わらなかったという結果ですので、結論としては各筋群週2回以上トレーニングすると良いでしょう。
頻度についてもトレーニング経験によって変えた方が良いと思います。特に初心者の場合はいきなり週4回を目指しても筋肉痛でできないでしょう。一方でベテランのトレーニーであれば一日のset数を制御すれば週5回6回やっても問題なく出来ると思います。
このブログでは時間の無いサラリーマンに向けて、全身法に近い分割法を進めていますのでその場合は週の頻度は4~7回くらいの高い頻度になると思います。
高頻度の全身トレーニングを行う際の注意点として一日の各筋群のset数を制限する必要があります。そもそもブロスピリットのように一日に各筋群を20set~30setもやるようなトレーニングでは同じ部位を毎日続けることは体力・時間的な制約で出来ないと思います。
一日のセット数とJunk Volume
では一日に各筋群どの程度のset数を行えばよいのでしょうか。結論としては週4回以上の高頻度のトレーニングを行う場合各筋群5~10set程度が良いでしょう。この結論は科学的な研究結果ではなく、私自身の経験から出した結論です。このset数は高頻度トレーニングで一日のset数に関する研究はまだ少ないので、自身の経験とJunk Volumeという概念から導き出しました。
このjunk volumeは一日に一つの筋群で行うトレーニングセット数のうちある一定のset数を超えるとそれ以上のsetは筋肥大効果がなくなるという概念です。
これは一日に一つの筋群を10~15set以上行っても効果が頭打ちになり筋肥大効果が高まらないというものです。つまり一日に二頭筋をアームカール5set、プリーチャーカール5set、インクラインカール5set行っても、アームカール10set、プリーチャーカール10set、インクラインカール10setやっても効果は一緒ということです。更にこのjunk volumeにより過度の筋周囲組織が損傷することで回復に時間がかかり、何ならマイナスであるともいわれています。
このjunk volumeの原因は上述の通り過度の損傷による回復時間の損傷、疲労によるトレーニングの質の低下などが推察されています。高頻度のトレーニングを行う場合にはjunk volumeを避け無駄な損傷を減らし適切な回復を与えることが重要になってきます。
また、多くの私も含め多くのサラリーマンは時間が限られています。一日のトレーニングを1~1.5時間とすると時間的な制約により毎日同じ筋群を10set以上こなすというのは難しいでしょう。もちろん腕等のコンパウンド種目で使われやすい筋群は可能だと思いますが、それ以外の種目で使うことが難しい胸や背中の幅などの各筋群に一日10set以上充てることは時間的制約からも難しいと思います。
「高頻度トレーニングの方が筋肥大効果を高めることが可能」仮説
ここからは私のボディビルダーとしての経験と、これらの科学的な理論を合わせた独自の仮説になります。その内容として週2~3回のトレーニングよりも週5~7回のトレーニングの方が筋肥大効果を高めることが出来るという内容です。というのも週2~3回で頭打ちになった研究では各頻度においてトレーニングボリュームを合わせていましたが、実際に週5~7回の方がトレーニングボリュームを稼げると思うのです。というのもJunk Volumeの理論を考えると週2~3回のトレーニングというのは一日のset数にどうしても限界が出てきてしまいます。
週3回一日10setが頭打ちであれば一週間に30setが限界ですが、週7回であれば一日10setが頭打ちだとしても一週間に70set可能です。また、疲労の回復面においても一日10set程度であれば毎日することは私の経験上可能です。このトレーニングボリューム理論とJunk Volume理論を組み合わせた考えから、考え出した私の仮説は、
「なるべく高い頻度で一日当たりの各筋群のset数を10set以下に抑えることで一週間に最大70setのトレーニングボリュームを稼ぐことが可能になり、最大の筋肥大効率をたたき出すことが出来る」です。
2023年シーズンが終了し、現在私はこのトレーニングで筋肥大を目指しています。この結果は来年のシーズンで脂肪を落とし切るまでわかりませんが、その時また結果を追記します。皆さんもこの高頻度筋肥大最高効率仮説を試してみてください。
トレーニング強度
ここではトレーニングの強度について触れていきます。まずはトレーニング強度を理解するために必要な基礎知識を解説し、その後実際にトレーニングメニューを組む際にどの程度の強度のトレーニングを組み込んでいけばよいか解説します。
まずここでいうトレーニング強度というのはトレーニングで扱うウェイトの重量という意味です。つまりトレーニング強度を決定するというのは、トレーニングでどの程度のウェイト重量を扱うかを決めていくという意味です。
RM、RPE
良くトレーニングに関してこのRM,RPEという言葉を聞いたことがあると思います。この言葉はトレーニング強度を扱う際に使う言葉ですので、まずこの言葉の意味が分からないとあらゆるトレーニング強度に関する話の意味が分からりません。これらの言葉の定義は以下の通りです。
RM : Repetition Maximum 日本語では「最大反復回数」と表現されます。意味はあるウェイト重量で限界まで動作を行うことが出来る回数です。具体例として例えばベンチプレス100kgが1回挙げられたとします。その人は1RM,100kgです。50kgを20回挙げれた場合20RM,50kgです。
RPE : Rating of Perceived Exertion 日本語では「自覚的運動強度」と表現されます。トレーニングのきつさを表す単位として、最大が10でとてもきつい、最小が0で全くきつさを感じないといった感じです。ウェイトトレーニングで用いられる場合は、あと一回も上がらないがRPE10で、あと一回くらい上がりそうというのはRPE9、二回上がりそうならRPE8と理解してもらえばよいです。
強度の定義
トレーニングを行う際によく高重量とか低重量とかそういった言葉が出てきますが、この記事ではこれらの言葉は以下のようにRMを用いて表現します。
高重量:1RMの90%程度で3~5RMの重量
中重量:1RMの70~80%程度で8~10RMの重量
低めの中重量:1RMの60~70%程度で12~15RMの重量
低重量:1RMの30~40%程度の20~30RMの重量
各強度の特徴
まず各重量におけるトレーニングの特徴を理解しておきましょう。
高重量
一般的に高重量トレーニングの特徴として筋力が伸びるということです。これは簡単に言うと、高重量のトレーニングを行っていくと扱える重量が大きくなりトレーニングの質が向上していくということです。
一方でデメリットもあり、まずケガをしやすい、そしてトレーニングボリュームを稼げないということです。後者については具体的に考えてみると明らかでベンチプレス100kg,1RMの人は50kgなら15repは出来るでしょう。この時1setのトレーニングボリュームは高重量なら100 x 1 =100kg、後者は50kg x 15 =750kgとなりトレーニングボリュームとしては7倍以上になります。
低重量
低重量のトレーニングの特徴は高重量の反対です。低重量はトレーニングボリュームを稼ぎやすい、ケガをしにくいという特徴があります。
一方で低重量では筋力の増大は見込めません。1RMの70%未満のトレーニングを行っていても1RMの重量は伸びません。低重量ばかりやっている人は少ないと思いますが、高重量をやらないと重量が伸びていかないのはトレーニーであれば実感としてしっくりくるはずです。
中重量
中重量のトレーニングは高重量と低重量の中間ですので特徴も中間的です。中重量では筋力はある程度のび、トレーニングボリュームも稼ぎやすいという特徴を持っています。低めの中重量も似たようなものです。がややトレーニングボリュームを稼ぎやすいです。
低めの中重量
この概念は私のオリジナルです。何故この重量を設定するかというと一般的な低重量トレーニングは重りが軽すぎてトレーニングフォームが乱れるためあまり好きでないという点と、回数が多すぎて時間もかかり筋肉以外の心肺機能がボトルネックになるということがあげられます。従い中重量まではいかないけどやや負荷を下げた重量という概念で低めの中重量を入れました。メニューに組み込む際は低重量の代わりとして考えてください。
メニューを組む際のトレーニング強度の考え方
筋肥大の効果上述の通りトレーニングボリューム理論ですので、重量×回数の総量を高めていくことが筋肥大を最大効率化していく上での課題となってきます。ではどのようにしてこれらの重量を組み合わせていくことが効率のよい筋肥大のトレーニングとなるのでしょうか?
結論から言うと中重量を中心にして、高重量、低重量のトレーニングを組み合わせていく。その割合は高重量:中重量:低めの中重量or低重量=1:8:1~2:6:2で組むです。つまり基本的には中重量で行い高重量も低重量も週に1回~2回行っていくイメージです。
このように設定する根拠ですが、各重量の特徴だけ見ると低重量中心に行った方がトレーニングボリュームを稼げるので効率的ではないか?と思われると思います。これは短期的に見ると実際にその通りだと思います。しかし長期的にトレーニングボリュームを増やす上でとても重要な要素があります。それは1RMを上げていく、つまりトレーニング強度を高めていく必要があるということです。
ここで漸進性過負荷の原則という概念が登場します。これはトレーニングは負荷に順応したタイミングで少しだけ負荷を上げていくことで徐々に筋力が増大していくという原則です。この原則に基づいてトレーニング強度を高めていくことで1RMが伸びていき、結果的にトレーニングボリュームの増大につながるのです。
筋力を高めるための漸進性過負荷の原則は、1RMの80%以上の強度でトレーニングを行わないと起こりません、つまり高強度or中強度でトレーニングをしないと筋力が伸びていかず長期的に見るとトレーニングボリュームが伸びず頭打ちになってしまいます。こうなったら筋肥大は望めません。継続的な筋肥大を行うためには高重量、中重量は必須です。
とはいえ筋力を伸ばすために高重量トレーニング中心でメニューを組んでいった場合別の弊害が発生します。トレーニングボリュームを減らさざるを得ないという点です。上述の通り高重量では同じ苦しさ、set数では必然的にトレーニングボリュームが減少してしまいます。またケガをしやすいというのも大きなデメリットでしょう。何故ならトレーニングの最も大事な「継続」が出来なくなるからです。
以上の点を踏まえてやはりトレーニングは中重量を中心に組んでいくということが重要だと思います。ジムで始めに習う10rep x 3setはある程度合理的ということです。ただやはり高重量をトレーニングに組み込んだ方が筋力が伸びやすい、という特性とトレーニングボリュームを稼ぎやすい低重量も少し組み込んでいきたいというのが最初に述べた割合の根拠です。
実際にやってみるとわかりますが、全身法で高重量を入れた場合次の日は神経疲労の影響もあるため中重量を行うのはややきつい場合があります。その時に低重量or低めの中重量を行うことでトレーニングボリュームを稼ぎつつ神経疲労を回復します。このバランスで高重量を一回入れてメニューを組んでいくと最初の1:8:1程度の割合になります。
強度に関する考え方は以下の記事で詳細に解説しています。
「追い込み」
「トレーニングは追い込むことに意味がある」、「トレーニングは追い込んではいけない」とい二つの説が世の中にはあります。実際そうであるともいえるし、そうでないともいえるというのが私の結論です。そもそもなんでこの相反するような主張が存在するのでしょうか?
その答えは「追い込む」という言葉の定義が曖昧だからです。追い込んでくださいと言われてあなたはどうしますか?自分の感覚でぎりぎり上がるか上がらないかのところまでやりますか?上がらないところまでやって更に補助をつけて動けなくなるところまでやりますか?正解はありませんこれは人によって異なるでしょう。
ここで「追い込む」という言葉をひとつ定義づけることにより、追い込む必要があるのかどうかという話をしていきたいと思います。
追い込むとは
ここで追い込みというのを先ほど説明したRPEという定義を用いて表現してみましょう。この記事では今後以下のように「追い込む」という言葉を定義します。
追い込み=10RPE:自分の力でもう一回持ち上がらない限界の回数
このように、補助を用いず自分の力で行ける目一杯というのを「追い込む」という状態と定義します。
追い込むべきか
このように「追い込み」を定義した場合、追い込むべきかどうかという問いに対して回答は基本は”No”です。つまりRPE10までやるべきでないというのが結論です。
なぜRPE10までやるべきでないかという点について解説すると、1setをRPE10まで行うと、疲労により次のsetの回数が落ち、結局トータルのトレーニングボリュームが低下するという研究結果があるためです。体感的にはわかりやすいと思いますが、「まだもう1回上げれるな」、というところまで上げるのと「もう限界、一回も上がらない」というところまで上げるのでは疲労感が別物です。
ではどこまで行うべきかというと筋肥大効果があるとされる疲労困憊(先ほど定義したRPE7~8以上)まで行いsetを終わらせるというのが正解です。
一方で特に初心者の場合、自分自身の感覚でRPE7~8というのが実際に筋肉にとってはRPE5~6程度である場合があります。つまりきついと感じてはいるものの実際にはそれほどでもないということです。RPEも主観的な指標であるため、トレーニング歴や個人差が出てきてしまいます。
従い、特に初心者では自分の感覚ではあと一回上がるか上がらないかのRPE9を狙ってトレーニングを行うと良いでしょう。
フォーストレップ・ドロップセット・レストポーズ法
では一般的に追い込みと呼ばれる手法であるフォーストレップやドロップセット・レスト法は意味がないのでしょうか?やる必要はないのでしょうか?これについては場合によってはやるべきであるというのが結論です。「いやお前さっき追い込むべきでないとか言ってたでしょ」という声が聞こえてきますが、先ほどの追い込むべきかという点においても”基本的には”という枕詞をあえてつけています。
それではどういった場合にやるべきかを解説していこうと思いますが、その前にそもそもこれらの手法がどんなものか簡単に解説していきます。
フォーストレップ:言葉の意味通り無理やり行うrepであり、具体的には自分で上げられなくなったあと補助者が補助を行いながらさらにrep数を重ねるという手法です。大体1~3rep追加する場合が多いです。
ドロップセット:ドロップセット法は自分で上げられなくなったら、重量をドロップする。つまり軽い重さに切り替えてすぐさま追加のrepを行うという手法です。よくジムで2種類の重さのダンベルを用意してサイドレイズしている人がいると思いますがあれです。
レストポーズ法:レストポーズ法は名前の通りですが、上がらなくなったら一度休憩(レストポーズ)し休憩後に更にrepを重ねるという手法です。レスト時間は大体数十秒で一般的なset間のレストよりもかなり短めです。
ではこれらをやるべきケースというのはどんな場合でしょうか?それは時間がない場合と、最終setの後という2種類のパターンです。
時間がない場合について解説します。例えば本当は5setやりたいけど3setしかやる時間がない日があったとします。この時普通に行うとトレーニングボリュームは3/5になってしまいます。ですがこれらの追い込み手法を組みわせることで追加のトレーニングボリュームを稼ぐことが出来ます。いつもの5setに組み合わせた場合疲労や関節のオーバーワークになるかもしれませんが、いつも5set行っている人が3set+これらの手法を行ってもオーバーワークになる可能性は低いでしょう。いつもより2set目、3set目のメインセット数は減るかもしれませんが、合計のトレーニングボリュームは稼げる可能性があります。
次に最終setの後についてですが、追い込まない理由がset間の疲労により回数が落ちるということがデメリットですので最終setであればそのデメリットはなくなります。従い、最終setのみこのような追加のトレーニングボリュームを稼ぐ手法を用いることは有効でしょう。
個人的なおすすめですが、スクワットやベンチプレスなどのコンパウンド種目はやはり疲労が大きいので、アームカールやトライセプスエクステンションのようなアイソレーション種目に組み込んでいくことが体のオーバーワークを防ぐという点でもおすすめです。
休養
筋トレの基本というところにこれを入れるか迷いましたが、意外と皆軽視しがちなのであえてここで入れておきます。トレーニング三大要素は食事・トレーニング・休養ですので休養はとても重要です。休養については具体的に睡眠、休息時間の2つの要素とその他で分類されます。ここでは各要素について解説していきます。
睡眠
もっとも大事な休養は睡眠です。睡眠が重要なのは誰もが理解していると思いますが、具体的にどの程度大事なのかを理解していない人は多いです。ある研究では8時間睡眠と5時間睡眠のグループ分けてトレーニングを行った結果、筋肥大効果に60%の差が出たという結果もあります。また、睡眠時間の変化で筋肉と脂肪の増大比率が変わり、短い方が体脂肪が蓄積されやすいという研究もあります。
そして睡眠時間が減ると単純に疲労の回復が遅くなり、ケガの原因になったり、オーバートレーニングの原因になったり、パフォーマンス低下によるトレーニングボリュームの低下等様々な悪影響をトレーニングに対して引き起こします。
それでは具体的にどれだけ寝ればよいのかということになりますが、一般的には7~8時間と言われています。とはいえこれには個人差が大きく、年を取るほど短くて良いなど年齢などの影響も出てきます。そこで十分な睡眠がとれているかという指標に以下の2点を確認してください。
- 朝目覚ましをつけなくても自然に目が覚めることが出来る
- 午前中に眠気が来ない
これらの2点が体感できるのであればあなたにとってその睡眠時間は適切なものでしょう。
休息時間
休息時間と言われると睡眠も休息時間ではと思う方もいると思いますが、ここでいう休息時間とはトレーニングを行わず筋肉を休める時間、つまりトレーニングの間隔と言い換えてもいいでしょう。この筋肉の回復時間というのは近年の研究の結果意外と短いものであることが分かっています。
具体的に言うと、初心者であれば24~48時間、上級者なら12~24時間と言われています。つまり上級者になれば毎日行ってもよいということになりますが、この時間にはどこまで「追い込む」かについて言及されていません。ブロスピリットのように一部位30setも行い、加えてフォーストレップ等をしていれば恐らくこの時間では回復しないでしょう。
従い、上記の休息時間を適用するのであれば、Junk Volumeを作らない、「追い込み」しないという点を守り適用するとオーバートレーニングやケガを防ぐことが出来るでしょう。ただ、もちろん個人差はありますので自分自身の限界を見定めて、「行ける!」という人はやってみてもよいでしょう。
その他
筋肉の回復については上述の二つが支配的で、それ以外はおまけみたいなものですが、一応触れておきます。筋肉の回復について効果があると言われているもので、アイシングやストレッチ、マッサージ等ありますがこれらの中で筋肉の回復効果が実際に検証されているものはマッサージです。
その他のものは関節の保護や柔軟性を高めるという効果はありますが、筋肉の回復という点では立証されていません。従い、十分な睡眠をとり、休息時間を空け、更に加えて回復効果を高めたいということであればマッサージをすることを推奨します。
最近ではマッサージガンがはやっておりますが、これらについては効果はまだ検証されていません。使っている私の体感的に効果がありそうな気もしますが、確実に効果があるの人の手のマッサージですので迷ったらそちらを選択してください。
まとめ
この記事ではボディビルのための筋トレ知識、すなわち筋肥大のための筋トレ知識の基礎を解説してきました。最近では2000年代の定説は色々覆っており、上級者でも新たな知見を得ることが出来たのではないでしょうか?今回の記事は特にボリュームが多かったので要点をまとめておきます。
- 筋肥大ためのトレーニングは「継続」が一番大事
- 最新の筋肥大理論は重量 x 回数を稼ぐ「トレーニングボリューム理論」
- 重量 x 回数に加えて「可動域」「ストレッチポジションの刺激」が重要
- 各筋群のset数は初心者:10~20set/1週、上級者:30set以上/1週
- トレーニング強度は高重量:中重量:低重量=2:6:2
- 一回のsetではあと一回上がるか上がらないかまで行う
- フォーストレップ等のトレーニングボリュームを稼ぐテクニックは時間がないor最終setで効果を発揮する
それではこれらの知識をもとに今からジムへいって自分のトレーニングに落とし込んでみてください。
コメント
コメント一覧 (2件)
[…] 【2023年最新版】ボディビルのための筋トレの基本【筋肥大理論】 […]
[…] 【2023年最新版】ボディビルのための筋トレの基本【筋肥大理論】 […]